
その日の気持ちに区切りをつける「句読点ミュージック」を選んで紹介。
07:Curly Giraffe —— 着慣れた古着のような、極上のローファイ・オルタナティブ
Curly Giraffe(カーリージラフ)は、GREAT3等のベーシストとして活躍し、多数のプロデュースも手がける高桑圭のソロプロジェクトだ。美大卒業後にデザイナーとして活動した経歴を持ち、2005年にデビューした。
その音楽の根底には、70年代のアメリカンポップやAOR、オルタナティブ・サイケ・フォークがある。自ら多様な楽器を演奏し、宅録特有のローファイな手触りと生楽器のふくよかさを同居させているのが特徴だ。
彼は自身のサウンドに意図的な「ほつれ」を残す。音を過剰に整えず、ウィスパー気味の柔らかな英語ボーカルを乗せることで、着慣れた古着のような絶妙な居心地の良さを生み出している。
代表作『Curly Giraffe』や『a taste of dream』など、どの作品も時代に左右されない美意識が貫かれている。穏やかな日常の空気を、そっと調律してくれる存在だ。
08:スチャダラパーとEGO-WRAPPIN’ —— 日常の輪郭を揺らす、軽妙なラップと艶やかなスウィングの交差点
スチャダラパーは、Bose、ANI、SHINCOからなる日本のヒップホップグループ。1990年のデビュー以来、日常を切り取ったユーモアあるリリックと肩の力の抜けたフロウで独自の立ち位置を築いてきた。
一方のEGO-WRAPPIN’は、1996年に結成された中納良恵と森雅樹によるユニット。ジャズや昭和歌謡、ソウルなどをルーツに持ち、エモーショナルなボーカルとスウィング感あふれるサウンドを特徴とする。
この二組による2017年のコラボレーション「ミクロボーイとマクロガール」は、双方の個性が拮抗しながら融合した一曲だ。スチャダラパーのレイドバックしたラップに、EGO-WRAPPIN’の艶やかでノスタルジックなメロディとホーンアレンジが絡み合う。
ヒップホップのミニマルなビートと、ジャズ・ソウルの肉体的なグルーヴが同居する音像は、日常の隙間に心地よい揺らぎにあわせてメロウに流れる、まさに極上の句読点ミュージックだ。
09:Gotch —— 体温を帯びたオーガニックな音響
Gotch(ゴッチ)は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンである後藤正文のソロプロジェクト。
2014年のアルバム『Can’t Be Forever Young』から本格的に始動した。バンドにおけるラウドなオルタナティブ・ロックとは一線を画し、インディ・フォークやエレクトロニカ、さらにヒップホップやソウルのエッセンスも取り入れたアプローチを展開している。
そのサウンドの根底にあるのは、アコースティックな楽器の鳴りと、精緻に構築されたオーガニックな音響デザインだ。mabanuaら気鋭のミュージシャンとのセッションから生まれる肉体的なグルーヴに、力の抜けた柔らかなボーカルが重なる。
社会への静かな眼差しと生活の機微を掬い上げるリリックは、過剰な装飾を削ぎ落としたトラックに溶け込み、確かな体温を感じさせる。心と身体をフラットにチューニングしてくれる良質な音像。
