
その日の気持ちに区切りをつける「句読点ミュージック」を選んで紹介。
10:SPECIAL OTHERS ― 季節の変わり目に馴染む、緻密なアンサンブル
1995年、横浜の高校の同級生4人で結成されたインストゥルメンタル・バンド。
メンバーは芹澤”REMI”優真(Key)、柳下”DAYO”武史(Gt)、又吉”SEGUN”優也(Ba)、宮原”BOBO”良太(Dr)。ジャムバンド、ポストロックを基調としながら、ジャズ、ラテン、ファンクなど多彩なエッセンスを昇華させたアンサンブルを特徴とする。
10代の頃に接した90年代のダンスミュージックからインスピレーションを受けつつ、歌のないインストゥルメンタルという形式にこだわり、武道館公演を成功させるなど独自の軌跡を辿ってきた。
代表曲の一つである「Laurentech」に象徴される通り、彼らの音楽は極めて緻密でありながら、聴き手に過度な力みを感じさせない。複数のジャンルが混ざり合う実験的な側面を持ちつつ、日常の風景に溶け込む叙情的なメロディラインを維持している点が強みだ。リズムとフレーズが重なり合い、心地よい高揚感を生み出すそのサウンドは、日常の隙間を埋め、緩やかに生活のリズムを整える。
11:坂本龍一 ― 日常に静かに溶け出す、水の旋律
1952年、東京生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了後、1978年にソロデビューし、同年結成された「YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)」で世界的な旋風を巻き起こした。以降、映画音楽や現代音楽、環境音楽など幅広いジャンルを横断しながら、常に革新的なサウンドを追求し続けた音楽家である。
代表曲の一つである「Aqua」は、娘の誕生をきっかけに制作された、極めてシンプルかつ美しいピアノ曲だ。
雄大な水を表現するのではなく、あくまで日常に寄り添う「水」の気配がそこにはある。甘さと、微かな塩気を感じさせるような切なさが同居する楽曲構造は、過度な感情の押し付けを排している。
特定の感情を昂らせるのではなく、ただそこに静かに存在し、聴き手の内側にあるリズムを整える。日常の隙間を埋め、自分自身と向き合うためのチューニングとして機能する一曲である。
12:YENTOWN ― 疾走する日常をバウンスする、ストリートの連鎖
2015年、プロデューサーのChaki Zuluを中心に結成された東京のヒップホップクルー。メンバーにはAwich、kZm、PETZ、MonyHorse、JNKMNといった個性豊かなMCに加え、DJや映像作家など多分野のクリエイターが名を連ねる。
1996年の映画『スワロウテイル』に登場する「円都(イェン・タウン)」をモチーフにしたというクルー名は、東京のストリートシーンを象徴する存在として知られている。2025年には結成10周年を記念した初のクルー名義アルバム『Y.E.N.』を発表した。
彼らの音楽性は、トラップ以降の現代的なサウンドを軸としながら、個々の背景を反映させた多様なフロウが交差する点にある。
代表曲の一つ「Asobo」は、Chaki Zuluによるバウンス感のあるビートの上で、クルー内のマイクリレーが展開される楽曲だ。日常の雑踏や遊びの延長にある昂揚感を、重厚かつ洗練されたトラックでパッケージングしている。
特定のジャンルに縛られず、仲間と共に「自分たちのLife」を鳴らし続けるその姿勢は、日常のルーティンを鮮やかに切り替えるための句読点として機能する。
