
Early August│思考を研ぎ澄ますビート
#27:iri – ふたりごと:言葉の余白に宿る微細な感情
神奈川県逗子市出身のシンガーソングライターiriは、ヒップホップ、R&B、ソウルミュージックといった多様なジャンルを横断する音楽性を有している。
高校時代からのボイストレーニングを経て、自宅にあった母親のアコースティックギターを独学で習得し、ジャズバーでの弾き語りからそのキャリアをスタートさせた。彼女の音楽は、スモーキーな低音域のボーカルと、ラップと歌唱を自在に行き来する表現力が特徴である。
RADWIMPSの楽曲「ふたりごと」をカバーしたこの作品は、野田洋次郎が作詞作曲を手掛け、Yaffleがアレンジとプロデュースを担当した。原曲が持つ言葉の多さと内省的な世界観が、iriのクールな歌声と洗練されたグルーヴによって再構築され、聴き手との間に程よい距離感を保ちながら、感情の機微を音の粒子として提示する。
情報が飽和した日常において、彼女の音楽は、思考のノイズから離れた場所で、微細な感情の輪郭を静かに浮き彫りにするような作用をもたらす。
#28:Hot 8 Brass Band – Sexual Healing (Bossman Edit):ニューオーリンズの躍動、脈打つリズム
Hot 8 Brass Bandは、ニューオーリンズを拠点に活動するブラスバンドであり、1995年にBennie Peteらによって結成された。彼らは伝統的なニューオーリンズのブラスサウンドに、ヒップホップ、ジャズ、ファンクの要素を融合させ、独自の音楽性を作り上げている。
マーヴィン・ゲイの「Sexual Healing」をカバーしたこの「Bossman Edit」は、彼らの代表曲の一つであり、2007年のリリース以降、ダンスフロアを熱狂させてきた経緯を持つ。ブラスサウンドの重厚な響きと、ニューオーリンズ特有のセカンドラインのリズムが、原曲のメロウな質感を再構築し、都市の雑踏の中にも見出すことができる生命力に満ちた脈動を表現する。
彼らの音楽は、単なるカバーに留まらず、ヒップホップ的な解釈とディープなファンクネスを注入することで、楽曲に新たな物理的な手触りを与えている。このサウンドは、日々の喧騒から意識を解き放ち、リズムと振動そのものに意識を集中させる、原始的な感覚を呼び覚ます役割を担う。
