
#31:Natsudaidai – サマー・ソルト feat. ザ・おめでたズ | 浮遊するビートと日常の祝祭
Natsudaidaiは、シンガーのヨウとトラックメーカーのNanaeからなるユニットである。2023年に結成・始動し、作詞、作曲、編曲、レコーディング、ミックス、アートワークに至るまでをセルフプロデュースで手掛けている。
Nanaeが手掛けるトラックは、現行のR&Bグルーヴや90年代のビートを再解釈し、ネオソウル、エレクトロ、ハウス、テクノといった要素を融合させて構築される。そこにヨウの浮遊感のある歌声が重なり、「Girls Chill Pop」と称される独自のハイブリッドサウンドを生み出す。
このサウンドは、情報が過密な日常において、耳に触れるノイズを静かに退け、聴く者の意識を穏やかな浮遊感へと誘引する。彼らの音楽は、物理的な音響の層が繊細に重なり合い、思考に静謐な余白をもたらす装置として機能する。
2025年7月23日にリリースされた「サマー・ソルト feat. ザ・おめでたズ」は、記念日をテーマに楽曲制作を行う富山発のラップグループ、ザ・おめでたズとのコラボレーションにより、彼らの表現に新たな祝祭の色彩を加えている。
#32:ミシェル・ルグラン – Les baladins du siècle d’aujourd’hui | 旋律の建築と時間の色調
ミシェル・ルグランは、1932年にパリで生まれ、2019年に没したフランスの作曲家、ジャズピアニスト、映画監督、俳優である。
音楽家の家庭に育ち、11歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ナディア・ブーランジェに師事するなど、徹底したクラシック音楽の基礎を築いた。彼の音楽キャリアは1950年代にジャズと映画音楽の分野で本格化し、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンといったジャズの巨匠たちとも共演を重ねた。
映画音楽においては、『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』など、全編を歌で構成する革新的な作品を手掛け、アカデミー賞を3度受賞している。
ルグランの作曲は、エリントンが持つ色彩感覚とドビュッシーの和声感覚が融合した、”ヨーロッパの風が吹くジャズ”と評されることがある。彼の楽曲は、緻密に構築された和声と流麗な旋律によって、聴く者に情景の奥行きと時間の移ろいを体験させる。
それは、日常の喧騒から隔絶された空間を生み出し、思考に静かな揺らぎをもたらす音響構造としてそこに存在する。
