くもをさがす (河出文庫) 文庫 – 2026/4/23
西 加奈子 (著)
このところ、がんで人も犬も含めて失うことが多く、漠然としたやるせなさ、悔しさ、諦めが自分の暮らしのどこかにインクのしみのように滲んできているのを見ないふりをしていた。
自身のカナダでのがん治療の経験を書いているこの本は、太く広く、深い。2023年に出版された本だが、今、読めてよかった。著者のようには難しいかもしれないが、でもそれはおそらく自分も通る道なのだろう。
ふと昔住んでいた札幌の雪景色を思い出す。先人たちが前の見えない雪深い中、先に歩いて道を作ってくれた。また雪が積もってしまうかもしれないけど、足跡はきっとわかるだろう。自分の歩みも誰かのためになっているのかもしれないと思うと歩く意味もあるようだ。
私たちはどのような状態にあっても、自分自身の身体で生きている。何かを切除したり、何かを足したりしても、その体が自分のものである限り、それは間違いなく本物なのだ。本物の私たちの身体を、誰かのジャッジに委ねるべきではない。これからも本物の自分の人生を生きてゆくために、私は自分の、自分だけが望む声に耳を澄ますことにした。そしてその声は、自分にはもう、乳房も乳首も必要ないと言っていた。
くもをさがす
著者:西 加奈子 出版社:河出書房新社
わたしの評価
★★★★★★★★★★
5.0
コロナ禍の滞在先であるカナダで乳がんを宣告された著者が、発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を克明に描いたノンフィクション。闘病中の恐怖や絶望、周囲への思い、時に訪れる幸福の瞬間が綴られています。
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