
物語は地下のプールから始まる。そこに集まる人たちから物語はある人物にフォーカスしていく。
1人の女性の生涯とその家族の物語。思い出はいつまでも残り、今は一瞬で過ぎ去っていく。その流れは皆同じ。動けなくなって、興味がなくなって、思考がなくなって、感覚がなくなって、生と死の区別がなくなって、存在がなくなる。その過程と最後を見送った人には何が残るのだろう。
人という器を徐々に満たしていく生が、小さな穴から少しずつ確実に流れ出していく。最後は流れ出る一方となりゼロとなる。地下のプールのように、確かにそこにあったけど忘れ去られてしまい、ふとした時に「あ~、そういえばそんなところもあったね」と思い出されるようなものなのだろうか。
確かにそこに存在すべきだった理由があり、集まってきた人を満足させ、あるいは不満な人はいなくなり、最後に残った人がその人の財産となる。長い話ではないけれど、自分は今何を感じているのかを確かめながら、時間をかけて読んでほしい一冊。

ーそして最後の一往復を泳ぎ切ると、彼女は更衣室で熱いシャワーをゆっくりと浴びて、また服を身に着け、それから階段を上って、目をぱちぱちしながら呆然とした様子で、眩しい、焼け付くような地上の世界に姿を現す。
