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道化師の蝶(円城塔/講談社)
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世界は澄み切っているけど混濁している
個人的には非常に面白かった!もともと芥川賞は結果で、その芥川賞自体の意味がわかんないものが多いんだから、意味を考えると拒否反応が起きて当たり前。 この本は螺旋的構造とかパラレルワールドとかじゃなくて、4次元的作品なので、そこを意識すれば、主体とか客体とか時系列とか関係なくなり、まさに沈没するように世界に入り込める。
破壊と同時に創造され、誕生と同時に死が存在し、拡散しながら収縮していることが当たり前の世界を純粋に抽出すれば、世界はこのように澄み切って混濁している。もともと人間は考えてるふりをして、本当は考えてないのだ。
文法の前に単語があり、単語の前に、文字があり、文字の前に形があり、形の前に線があり、線の前に点があり、点は想像を起源として…。世界をナノレベル、分子レベル、原子レベル、素粒子レベルを超えて、集合体無意識に向かわず、あえて殻で包まれているというところが逃げてなくて潔い。
本を読むという私達の暗黙のルールを軽々と越え、文字を追わせることに集中させ、その裏で一つのテーマを背骨とする著者は、ある一つの芸術の域に達してしまった。初めて本を読んでデジャブを意識的に認識できた衝撃的な一冊。
その衝撃は木製バットが左後頭部に事故的に当った小学生の時のような、感覚、衝撃、そして認識の永遠の一瞬以来のトリップ。